意地を張った


小さな小さな意地を……



“喉渇いたんで水下さい”の一言が言えない自分そこにいた。




“本当なら、買って来て貰えるんだよね……”



涙が出そうになったのを、堪えてあたしはそおーっと起き上がり病室を出た。




「あら?何してるの!!」


一瞬、体がビクンと反応しあたしは後ろを振り返った。



「ちょっと……」



「ちょっと、じゃないのよ?まだ歩いちゃダメ!!!」



年配の看護婦サンがあたしの腕を掴みベッドへ戻した。



掴まれた腕は痛かったはずなのに、なんだか人の温もりを感じて温かくて涙が零れた。



「はい、座って。どしたの?」



「あの…………」



静まり返る病室が、あたしをまた寒くした。



「なに?」



「喉……渇いちゃって」



「あら!ならなんで看護婦サン呼ばないの?ナースコール使いなさい」



「あ、はい」



「ちょっと待っててね!」




「はい!お茶でいいかな?」


「ありがとうございます」


「何かあったら押すのよ?ナースコールをね」



「はい……」



そう言うと笑顔で病室を出て行った。



手に渡された紙コップの中のお茶を口に流し込むと、涙で凄くしょっぱい気がした。




“あたしもミルクティー飲みたい……”




そう思いながら一口飲んでテーブルに置き布団に潜った。




それから長い長い眠りにつき……




起きたらお昼を過ぎていた。