「はぁ~~すぅ~~」


立つ事すら、もういっぱいいっぱいで、時々手を止めては茶碗を洗い終え、あたしは入院の支度を始めた。



時計を見る余裕なんてもうなく、あたしは玄関に入院の支度を揃え守の居る部屋に行った。




何も知らずに横になってる守を見て、一瞬涙が出そうになったが一瞬で笑顔を作った



「守……?」



腰を摩りながら守の横に立った。



「どした?」



「陣痛来てるみたい……」


一瞬で起き上がった守は慌ててあたしの肩を掴んだ。


「支度しなくちゃ!!用意は何処だ?大丈夫か?」


慌てる守を見て、目の前で入院の準備をしていたあたしなんて視界に入ってなかったのかと思うと悲しくなった。



「もう、準備してあるから病院連れて行って」



深くため息を付き寝ている愛を起こしながら実家に電話し病院に電話をした



「何でもっと早く言わないんだよ」



そんな冷静な言葉を浴びさせられ、あたしは鼻で笑っていた。



言ったらどうしてた?


労って腰でも摩ってくれた?


優しい言葉かけてくれた?


熱がある時でさえ、ツワリが酷かった時でさえ『寝てろよ………』だけしか言わなくて、



それでも起きて夕飯の準備をしてるあたしの手伝いなんてしてくれた事なんてないくせに……。



「本当に陣痛か分からなくて騒いでもな……って」



そう本当は守にぶつけたい思いをあたしは飲み込んだ



守はそのまま、あたしの手をひく訳でもなく、車のエンジンをかけ始めた。




愛は実家に預けて、あたしは何故か守の親方と守と3人で病院に向かった。


「流奈チャン大丈夫?」



「あ、はい」




守は車の中であたしに声かける訳でもなく、守の電話の着信音と、親方と守との会話だけが車の中に響いていた。




車の後ろで痛みと戦いながらも窓から見える綺麗な星をただ見つめてた。