“陣痛――――?”



でも、何日か前の検診でも赤チャンが下りて来てる気配すらなかったから“予定日間近だからかな”


そんな不安な思いを抱え、夕飯の続きをしていた。




「あ~っ!いってっ!」



台所に捕まりながら体を、反らしひとり痛みを我慢してた。



あれから……
何となく20分おきに来てる痛み。




あまりにも痛くて夕飯のメニューを変えカレーを作っていた。



ガチャガチャ……♪♪



“守だ…………”




「おかえりなさい」


「ただいま!!」



そういつもと変わらない、あたし達の会話。



あたしは陣痛らしきものが来てる事すら守に言わずにテレビを見て居る守の前にカレーライスとサラダを出した。



「あれ?食わねぇーの?」



「うん、ちょっとお腹いっぱいかも」



「そうか、じゃぁ、いただきます!」



何も感づかない守の横に腰を下ろした。



“やっと座れた………”


時計に目をやると8時前になっていた。


そして、時計と睨めっこをしていた。



“うっ……”



痛みが走り守に見えないようにお腹を摩る




言えなかった………



弱みを見せたくなかった



出産と言う夫婦の一大事なのは分かってるけど……


守には泣き付けない自分がいた。



お互いずっと乗り越えていない大きな大きな壁を、また乗り越えようともせず1人で戦ってた。




―誰も信用しない―



紙切れ1枚で簡単に夫婦になったあたし達は、本当にお互いが空気みたいな存在だった




守に頼れない自分がいた



家族と言うものに省みず、平気で女に声をかけるような男なんかに頼れなかった



――また簡単に裏切られるんだから――



そう、あたしはまだ闇の中で1人さ迷っていた




「ご馳走様」


「はいっ」



“そうこれでいい”



そう言いながら守が食べた夕飯の食器を持ち深呼吸をして台所へ向かった