「おい!聞いてんのかよ?」


「まぁ、いいや。二度とこの番号に電話してくんなよ」



「あぁ、二度としねぇよ!!」



そう言ってガチャ切りをした。


その後も……
怪しげな番号にかけたら、あたしの勘は全て的中だった。



電話から漏れてくるのは女の声―――



笑うしかなかった。



守が怪しい行動をとったり
電話に出なかったりなんてしょっちゅうで別に信じてた訳でもない……


それでも、何処かで期待していたのかもしれない、



あたしだけ見ていてくれてるもんだと


何処かで期待していたのかもしれない。



あたしの手の中にある真実を教えてくれた携帯を握りしめていた。





日に日に大きくなるお腹を抱えながら抱く沢山の不安や苛立ち……


それをぶつける事さえ出来ずに毎日を送っていた――


守の帰りが遅い日には疑いの冷めた目で見て


あたしには笑顔がなくなっていた



検査を繰り返す中で、癌の数値はギリギリのライン。


先生の浮かない顔―――



それでもずっと祈り続けてた……



“必ず大丈夫だ”



そうずっと埋まらない寂しさと不安。


満たされない心を……必死に埋めようと、戦ってた。


唯一、あたしを救ってくれていたのは



小さい小さい愛の笑顔だけだったんだ―――