どうやって実家までの道のりを歩いていたのだろう。


いつの間にか、薄暗くなって行く景色……。




あたしとすれ違って行く沢山の人々、



なんでそんな風に笑える?



なんでそんなに楽しそうなの?



みんな、辛い悩みや思いを抱えながら生きてるの?




あたしだけじゃないよね。



すれ違う人々の群れの中で

あたしだけが、この時間に取り残された気がして



薄暗くなった雑踏の中で足を止めた。



ポケットの中から聞こえる着信音と共に、あたしは空を見上げた。





“翼に逢いたい………”



そう、まだ夜空には遠い
夏の空を見上げては呟いた。



“翼に逢いたいよ……”



届かぬ想いを歎きながら
あたしを見て見ぬふりをする人々の中で




下を向いて、歩き始めた。