「ええ!?利歩も100mなの!?」

驚きを隠せない様子の千夏。
しょうがないだろう。私のもともとの種目は200mなのだから。

「あはははーごめんね!黙ってて」

「利歩がいるなんて・・・」

そんなに私が100m走ったらダメなんだろうか、千夏はうなだれた。
しかし、シャキッと目を輝かせ。

「私負けないよ。利歩には海君のことでお世話になってるし、利歩をこして見せる!」

でも千夏の目標は、私より大分低い。
正直負ける気がしなかった

「負けるもんか!」

笑顔で千夏に言った。
千夏はちょっと戸惑うような表情を見せたが、また、私と同じく笑顔で
「望むところ!」と言って走り終わったように拳を二人でぶつけ合った。


今日の部活は本気の練習になった。
私は千夏の恋の応援はそっちの気にして、ただ本気で練習していた。
「なあーなんで今日あんな本気になってん?短距離女子ー!」
ここまで聞こえてくるほどの声は海の友達、坪倉空。

「ああ。なんだろうな。」

腕を組んでささっとスタートラインに
たって腕時計を設定する。

「よーいどん!!」

5000mのペース走が始まった。
私の横をものすごいスピードで通る。
小さな声で「ファイト」と聞こえた。
千夏は「頑張ってー!!」と海に向けてだろうか応援している。
風が吹いて、私は心を入れ換えて練習を続ける。





部活を終了させるチャイムがなった。

「利歩!」

「なに?海」

「お前さ。千夏と勝負してるだろ?」

なんで知ってるのか。

「ええ?何で?」

「分かるよ。練習やけに本気だし。千夏と一言もしゃべんないし。もしかして喧嘩?」

「ううん。喧嘩じゃないの。」

これは軽いゲームだよ。