靴箱にて。

「よ、新島。」
聞き覚えのある声が、私を呼んだ。




…唯人君。


「…。」
何も返せない私。



唯人君はただ、口角を少しあげ笑い、その場から去った。


私は出しかけの上靴を手にもったまま、立ちすくんでいた。




さっきの顔が、頭ん中でリプレイする。



笑顔といえないくらいの無表情の顔だった。

彼をあまりよく知らない人は、ただのノーマルの顔に思うかな。



でも私 ずっと彼を見てた。



だから




今嬉しくて仕方ない。


そんな自分に失望して仕方ない。



恋する資格はないんだよ?


彼の邪魔をする私に





ふぅ、と軽く息を吐き

また私は私に戻った