「…どうかしたん?」
唯人君は、少し気まずそうにそう言った。

急に泣き出した私。
なんか自分が悪いことしたのかと、少し焦ってるようにも見える。

「…唯人君のせいじゃ、ない。」

渡り廊下の壁に背持たれて、二人は座りこんでいる。
ここは、旧校舎に通じるためよっぽどの事がない限り人は通らない。
時々理科担の先生が『怖いからこっちにおいて!!』と苦情を受けたためこっちにある骸骨や人体模型をとりに来るくらいだ。

「話なら、きくから。」
「…うん。」

そう言って、沈黙が流れる。

「私ね…。」

このまま黙っているのも嫌で、口を開く。
唯人君は黙って話を聞き始めた。



「中学生の頃、真衣ちゃんって友達がいたんだ…。」

中1の、秋。
転校してきた私を、快く受け入れてくれた当時隣の席だった真衣ちゃん。
つまらない私なんかの話を、いつもにこにこ聞いてくれていた。
真衣ちゃんは人気者なのに、いつも私を仲間に入れてくれた。
徐々に友達も増えてきて、楽しい日々だった。

真衣ちゃんはクラスの中で結構背が高くて、よく私の事を優しくなでてくれた。
私はそれが嬉しかった。
とってもとっても嬉しかった。

でもある日、少しの女の子が真衣ちゃんを気にいらなくなり始めた。
真衣ちゃんの陰口がそこら中に広がって…。
いつのまにか、直接真衣ちゃんに向けて危害を加えられるようになった。
私は苦しんでる真衣ちゃんがどうしても許せなくて、「やめなよ!」って、その子たちに言った…。
そしたらもちろん、ターゲットは私に変更。
私はそんな覚悟は決めて言った。
でも真衣ちゃんが助けてくれるって信じた…。

でも彼女達は真衣ちゃんに「助けるな」って指示した。
それでも、それでも私は信じた。
助けてくれると。きっと。

…でも真衣ちゃんは、彼女達に負けた。


1年が終わるまで、私は苦しみ続けた。
2年になって、自然とイジメが終わっても、私はまだ真衣ちゃんを信じていた。
真衣ちゃんを信じていた、信じていた…。

でも3年になって、真衣ちゃんはその、私と…それと真衣ちゃん自身をイジメていた子達と仲良くしていた。
私とすれ違ってもスルー。
いつだって、彼女たちと。彼女たちと。彼女たちと。

ああ、私は裏切られたんだ。
もういらないんだ。

そう思うと友達を作るのが怖くなってしまって、一人になった。