「てめぇこそ、まりあちゃんのこと何も知らねぇくせに威張ってんじゃねぇよ!」
おー…怖っ。
やっぱ圭吾がいてくれると助かるな。
今のでトドメを刺されたのか、赤間は口を詰むって涙を堪えている。
「圭吾、もういい。サンキュ」
「どういたしましてっ」
二カッと人懐こい笑顔を浮かべた圭吾からは、さっきまでの怖いオーラは全く感じない。
…二重人格か、お前は。
「……よ」
「なに」
「卑怯よ!こんなみんながいるところで言うなんてっ」
卑怯、ね。
「てめぇ、人のこと棚に上げて言えんのか……」
「圭吾」
今にも赤間に掴みかかりそうな圭吾を制止して、俺は赤間を見下ろす。
「卑怯でも、たとえ人に嫌われるようなことでもいい。大切な奴守るためなら、俺は何だってする。
…二度と俺とまりあに関わるな」
俺の言葉を聞いた瞬間、赤間がずっと堪えていた涙を流した。
これで、もう何もしてこないだろ。
あとは…。
俺はクラスと廊下にいる生徒に向かって呼びかけた。
「お前ら、ひとつ頼みがある。もしまりあに手ェ出そうとしてる奴がいたら、助けてやってくれるか?」
本当は俺一人でまりあを守ってやれたらいい。
けど、今回みたいに守ってやれない時があるはずだ。
どんなことをしても守ってやりたい。
俺の頼みが、こいつらに伝わってくれたら…。
「白石の頼みなら断れねぇよ!」
え…。
「そうだそうだ!お前の頼みならしょうがねぇ!」
「私もー!」
「あたし、まりあちゃんと話してみたかったんだよねー!」
お前ら…。
「お前の人望がここで役にたってよかったじゃん。これで一件落着?」
「あぁ。そうだな」
まりあ、こんなに誰かを守ってやりたいと思ったのは、お前が初めてだ。
……俺がずっと、お前を守るよ。
この日、俺はそう心に誓った。