まりあは満面な笑みのまま駆け寄ってくると、そのまま俺に抱きついた。



「燈弥っ!」



こいつは俺を見たら抱きつくっていう設定でもされているのだろうか……。



「おー、まりあちゃん!どしたのー?」



圭吾がヒョイと俺の後ろから顔を出すと、まりあは何かを思い出したように俺から離れた。




「そうだった!燈弥、これ忘れ物!」



忘れ物?



まりあが俺に手渡したのは、現代文の教科書だった。



「昨日課題やって、そのまま置いていっちゃったでしょ?」



俺はそれを受け取ると、まりあの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。



「助かったっ……!鬼沢に説教されるとこだった」




鬼沢は授業の初めに忘れ物をチェックする細かい人で、忘れ物をしたらペナルティーとして一週間雑用をやらされるんだ。