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時間はどんどん先に進み、気づいたらクリスマス前日だった。 バンドのメンバーに食事会へ誘われた。 毎年行っているのだが、今回はどうしてか一人で過ごしたかったので断った。
その際、電話口で大山に「どした? 最近いつも以上に変だぞ、お前」と言われた。 ……――――ということは、僕は普段から変なのか。 少しショック。
部屋に籠もって曲を作ってた。
どうしても今日中に作りたいものが二つあり、そのうち一つは午前中に完成させた。 構成もアレンジも完璧だ。
現在製作中のものは、どうも恋の歌になりそうだ。
いや、恋と呼べるのかも怪しい感情を本に作ったので、恋の歌ではないかもしれない。
無論頭の中に浮かんでいた人物はあの“つぐみちゃん”だった。
どういう訳か彼女の存在が、僕の中で強烈に残っている。 いや“残っている”というよりは“居座っている”。
いつぞやにテレビで見た、山口百恵を彷彿とさせる人物だった。 力強さと繊細さが共存して、ミステリアスな印象がある訳だ。
先日、ファミレスを出る僕を真っ直ぐに見つめていたあの目が、どうしても忘れられないのだ。 僕はひたすら困惑するしかなかった。
一体なんなのだと。 僕に何を言いたいのだ、と。
あれに対して、自分がどうすれば正解だったのか、未だに答えが出ていない。
その困惑が勝手に唄になった。
あの細い肩は抱き締めたらどんな感触がするのだろう?
あの赤い唇は、キスをしたらどれほど柔らかいんだろう?
あの華奢な体は、触ったらどんな手触りなんだろう?
肌は全身白いのだろうか?
抱いたらどんな声を漏らすのだろうか?
その声はあの素晴らしい歌声とどう違いがあるんだろう?
何時の間にか泥沼に嵌っている。 完全に彼女に興味がある。
最初から好きだったのかも知れない。 ただ正面から向き合うのが怖いから、カフェに行くのを止めてみたりひどい事を言ったりしたが。
本音は自分の物にしたいと思っていた。
先日、彼女と一緒に居たあの少年を見て、あれが恋人だと悟った。
あの時は胸が痛かった。 素手で心臓を掴んで圧迫されてる感じがして、このままでは死ぬと思った。 逃げたかった。
なのに何故、彼女はあの時僕を見ていたんだ。 何であんな、特別な感情さえ思わせる程優しい瞳で。
だってもう、大切な人が目の前に居たじゃないか。
それなのに僕をそんな目で見るなよ。 期待してしまうじゃないか。
「…………クソッ」
悔しかった。 あいつは、どれだけ僕を苦しめれば気が済むんだ。
僕には到底歌えないような唄を、
僕には到底出せないような声で歌い、
僕の心まで鷲掴みにして揺さぶる。
泣いてしまいたかった。 地獄のようだった。
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