「ねぇ、どんなのになりそう?」
「解らないよそんなの」
恵美は美人であるが、正直見た目以外に魅力を感じない。 ――――本人にそれを言ったら、泣かれるだろうな。 泣かれたら、もの凄く面倒くさいな。 さっさと別れようか。
「もう寝ようよ」
「もうちょっと」
「もういい、先に寝る」
別に僕は、彼女に泊まれなんて言った覚えが無い。
セックスしただけで泊まる事を許されるという思考がまず理解不能だ。 図々しい。
彼女との交際は一年近くである。 何故こんなに続いたのか、我ながら謎である。
第一彼女は好みじゃない。 うるさいし小さな事に拘る。 良い所といったら、体の相性ぐらいだ。
僕の仕事にもあまり理解を示さない。 というより仕事より自分を優先して欲しいようだが、残念ながら無理である。 それほど大事な存在じゃない。
「本当に寝ちゃうよー」
「勝手にすれば」
「いじわるー、ばかー」
「うるさい」
ヘッドホンを着けてパソコンに繋いだ。 密閉式なので、恵美の喧しい声が一気に聞こえなくなる。
「…………」
一度、最初から最後まで曲を通して聴いた。 なんだか、さっき聴いた時よりも安っぽい曲になってる気がする。
なので全部削除した。
気疲れから長い溜め息が出た。
着けたばかりのヘッドホンを外して、頭を抱えた。
どうにも不調である。
自分の作った曲が嫌で仕方ない。
最近じゃまともに作詞も出来ない。
先日、新譜を発売したが、あれは以前作った曲である。 今の自分には、あんな曲は書けない。
「俊ちゃん? どうしたの?」
振り返ると、僕のベッドの上で布団にくるまる恵美が居た。
とりあえず、僕は彼女の体を隠す布団を全て剥ぎ取り、彼女を抱く事にした。 恵美もそれをアッサリと受け入れ、すぐに足を開いた。
なんでだろうなぁ。
なんで書けないのかなぁ。
楽しくないなぁ。
何のための仕事なんだっけコレ。
あれ?
どうやって曲ってできたんだっけ?
どうやってたっけ?
ふと、脳内に先日の事が蘇る。
あの少女は、どうしてあんな風に歌えるんだろう。
どうして僕はあんな風に歌えないんだろう。
少女が羨ましかったし、憎らしかった。
悔しかった。
それでも、
――――あの声は好きだった。
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