『ねぇ、真也?』

「ナニさ、急に。お前から話掛けんのは珍しいな。」

『そう?ところで、今度はいつchessをやるの??』

「…chessしたいのか??はじめはあんなに嫌がっていたのに…」

『したいってわけじゃないけど…chessやってるときの真也が、一番好きなんだ!ボク』

一体どういう風の吹きまわしだ?

こいつがこんなこと言うなんて…


「そりゃどーも。」


俺のハンプティ―――ツクモは俺が5歳の時に生まれてきた。
性格に言えば、夢の中に出てきたものを、翌日俺がその通りに作っただけだが…

ツクモは、感じ表記だと、九十九。
完全な百まではひとつ足りないが、その足りない一つを補っているのが、この俺だ。

ツクモと俺がいれば、chessじゃ誰にも負けない。

実際、負けたことがない。


ってか、負けるはずがない。


なんてったって、chessを作り、始めたのが、俺の親父なんだから。



『ねー、真也?』

「あ??」

『遊ぼー…』

「chessしに行くか…」

『うん!!』




始めの頃は、こいつはchessに対してこんなにも積極的ではなかった。
どちらかと言うと、やりたくないと駄々をこねていた。

それもそのはず。

俺自身が、chessを毛嫌いしていたのだから。

“ハンプティは、ダンプティの心の写し鏡だ”

昔親父に言われた言葉。

その言葉を聞いて、俺がchessにやる気を出すと、ツクモもやる気を出した。