こっち向いて、早瀬先生。


「────はい、もしもし」




おそるおそる
声を出してみる。



「ひよこか!?よかった~~…」



携帯からは
焦りの色を隠せない
早瀬先生の声が聞こえてきて。



わたしは夢でも見ているんだろうか
って、自らの耳を疑った。


「大丈夫か!?ごめんな、俺があのとき話聞いてやれれば…」



先生は早口でしゃべっている。
らしくないなと、思った。


いつも余裕そうな顔で
ニコニコと笑っている先生が
こんなにも、焦るなんて…



「おい!ひよこ?大丈夫か?」



「……………なんで、番号…」




反射的に言葉が口から
こぼれた。




だって、そうだ。
なんで先生はわたしの番号を
知っているの?

教えた覚えはないのに…




「綾花にきいたんだよ!お前何にも連絡しないで帰っただろ!?心配したんだぞ!!」




わたしはこの日
はじめて先生に怒られた。



そして、こんなにも余裕のない先生を
はじめて知ったのだった。