ぐるぐると、渦巻いていたものが
鉛のようなどろっとした液体となって
胸の中を満たしていく。


言葉では表現出来ないほど
心の中は黒く、沈んでしまった。




「そうなんだ…」



と、小さくつぶやくのが
そのときのわたしには精一杯で。


綾花はそんなわたしなど
目に入っていないようで
うっとりとした甘い声で



「かっこいいよね、あの先生」

「あんな人うちの学校にいたんだね」


など、勝手にひとりで
話していた。



わたしの耳にはその言葉の数々は
届いているようで
届いていない。



まるで、夢でも見ているかのように 
感覚が現実味を失って
どろどろとした嫉妬心も
どこかへ消えていこうとしていた。



どうしたんだろう、わたし。