こっち向いて、早瀬先生。



ある日の放課後。


たしかあの日は
ひどく日差しが強い日で、
じっとしているだけで
汗が滝のように湧いてくる。


そのくらい暑い日だった。



「今日暑いね~…」

綾花はだるそうに
背中を丸めて言った。


「ほんとだよ…これじゃ、死んじゃう…」


わたしも綾花も1日の授業を終えて
疲れと暑さで教室から動けずにいた。





わたしたちの学校には
冷房が各教室に設備されていない。



冷房があるのは
限られた教室だけだった。




「あっ!」


突然綾花が大きな声をあげた。



「なに~?どうしたの」


ぐったりとしたわたしは
まともに返事をする余裕もなかった。


だから綾花の言うことも
危なく聞き流してしまう
ところだった。



いや、今となっては
聞き流してしまえばよかったと思う。