いつもの俺ならここで言い返すが、今日は何て言ったって機嫌がいい。


俺は珍しく笑いながら言った。


「ごめん、ごめん」


ソラはキョトンっとした顔で、首をひねった。


しばらく俺の顔をじーっと見ると、フワッと微笑んで言った。


「零也くん。何かいいことあったの?」


「え??」


俺はポカーンと口を開ける。


何でわかったんだ??


こいつはエスパーか??


俺が眉を潜めていると、ソラはよいしょっと座り直しながら言った。


「隣においでよ。零也くんのいい事。聞かせて」


「え?」


またもや俺は、ポカーンとした。


が、今度は眉を潜めたのではなく、目をキラキラさせて、口元を緩めていた。


今まで一度も俺の嬉しい理由を聞いてくれる人はいなかった。


そりゃあ、地位も権力も持っているやつの自慢話なんか聞いてくれるわけない。


それを分かっていたからこそ、俺も今まで一度も自慢をしなかった。


親にだって一度もない。


そんな俺に、初めて「聞かせて欲しい」っとソラが言った。


初めて……。


俺はスタスタっとソラの隣まで歩き、ストンっと腰を下ろした。



そうだ。



初めて「俺自身」に興味を持ってもらえた。