もしかしたら、落し物を拾ったのかもしれない。


それで、ソラは覚えていたのかもしれない。


俺とソラの間に、わずかな沈黙がながれた。



それをやぶったのはソラだった。


ソラは相変わらず、ブカブカの腕時計をいじりながらボソッとつぶやいた。


「私……もう行かなくちゃ」


「え……あ、おい!」


俺の横をすり抜けるように、ソラは走っていった。


そしてドアの目の前で立ち止まり、クルッと俺の方を振り返る。


その表情は見事にいつも通りの、微笑みがあった。


「零也くん。私はね、大抵のことには答えてあげれる」


そして間をおいてソラは言った。


「でも、答えてあげられないこともあるのよ」


そう言ってドアを開けた。


そしてもう一度ニコッと微笑んでソラは言った。



「ちなみに、零也くん。その考えはいい線いってるよ。……でも、完璧な答えじゃないなぁ」


ソラは今度こそ、屋上から姿を消した。