「まったく……」

付き添いのベッドの中で、翼が拗ねる。


「サプライズ効いちゃったのかな?」
陽子がおちょくる。


「でも嬉しかった。まさか陽子とイブが迎えられるなんて……」
翼の声がフェードアウトする。

翼は泣いていたのだ。


「ごめんね翼。怖い思いさせちゃって。でも、私の影ってそんなに……」


「ああ、怖かったよ」

陽子が言おうとしたら、翼が被せた。


「だって幽霊は美人だって言うじゃん。陽子が美し過ぎて本物かと思っちゃったよ」

翼が陽子の額をつつく。


陽子はわざと拗ねた振りをして布団を被った。


「陽子……」
翼が不安そうに聞いた。


翼がそっと布団の中を覗くと、陽子は声を震わせて笑っていた。

でもそれはすぐ大笑いになった。

翼は慌てて陽子の口に手を置いた。

それでも、収まらない。


翼は困り果てて最後の手段に出た。

それは……
陽子の唇を自分の唇で塞ぐことだった。


甘い甘いクリスマスイブ。

勝が仕掛けたサプライズに見事にハマった翼と陽子。

二人は付き添いのベッドの中でいつまでもイチャイチャしていた。




 翌朝陽子は驚くべき物を見た。
それは勝からのクリスマスプレゼントだった。

陽子は、勝が車椅子で移動して二人の枕元にそれを置いてくれたのだと思った。
でも本当はそれは考えられなかった。

そして、本物のサンタクロースの仕業だと思うようになっていた。


(もし看護士さんだったらどうしよう……二人が一緒に居るところ見られちゃったかな?)

陽子はそれが怖かった。


次に会った時、どんな顔をしたらいいのか……


でも……
見られたのが勝だったら、もっと怖いと思っていた。

だから、やっぱりサンタクロースが来たってことにしてしまった陽子だった。


でもそれはサプライズを仕掛けた張本人の勝。
そこは抜かりなかった。

ついでに自分の手の中で、二人の手と手をを組ませていたのだ。


そう……
プレゼントは勝が杖をつきながら歩いて置いた物だったのだ。


二人の恋を見守ること。
それが今の勝のパワーの源になっていたのだ。