モノクロ

 

「やだっ! 佐々木さん、すごくいい子じゃない!」

「へっ?」


若菜さんの思わぬ言葉に目を向けると、そこには口元を手で押さえて、キラキラとした目で私を見る若菜さんの姿がある。

え? え?


「あっ、ごめんね? 挨拶してなかったわよね。私は若菜で、こっちが娘の梢。よろしくね。ねぇ! 佐々木さんの下の名前は!?」

「えっ? あっ、明希です! 明るい希望、って書いて“アキ”。こちらこそよろしくお願いします」

「明希ちゃん。すごくいい名前ね! ほら、梢も明希ちゃんにご挨拶は? こんばんは、って」


佐山さんの服を小さな手で握り、胸に顔を埋めて、ちらっと私の方を見る梢ちゃん。

その大きなくりくりとした瞳はキラキラと輝いていて、すごくかわいい。


「……こんばんはっ」

「っ!! ここここんばんはっ!」


少し恥ずかしそうに挨拶をしてくれる梢ちゃんがまたかわいくて、きゅんきゅんしてしまう。

くぅ~っ、たまりません! 私もぎゅーって抱き締めたい!


「くっ。梢よりさきこの方が日本語が下手だな」

「えっ?」

「ほら、滑舌がどう考えても梢の方がいいし」

「そ、そんなことないです!」

「ほら、また口ごもった。くくっ」

「っ!」


楽しそうにくすくすと笑う先輩の笑顔を見れるのは嬉しいけど、何かもうずっと会話では負けっぱなしのような気がして悔しい!

どうにかして先輩に勝てる方法はないものか……!

……と思ったけど、バリバリの現役営業マンに言葉で勝てるわけがない。