その瞬間、エレベーターが到着し扉が開く。
「あ、来たな。じゃあ、仕事頑張れよ」
「はい。先輩も!」
「うん」
先輩の笑顔が見送ってくれる。
エレベーターに乗り込むために先輩に背を向けた時、私の後頭部にぽんと先輩の手が触れた。
「!」
驚いて振り向くと、先輩の笑顔があった。
「じゃあな」
「は、はいっ!」
先輩が私の頭を撫でてくれたことが嬉しくて。
手が震えそうになるのを抑えながら、企画部がある7階のボタンを押す。
そっと目線を上げてエレベーターの外を見ると、先輩がにっと笑い口を開いた。
「さきこの企画、楽しみにしてるから」
「ありがとうございます! 精一杯頑張りますっ」
「うん」
先輩が私の言葉に笑顔で頷いてくれる。
もっと先輩のことを見ていたいと思ったけどそうもいかず、私はエレベーターの扉が閉まるその瞬間まで先輩の姿を見ていた。
扉が閉まってしまい上昇を始めるエレベーターの中、私は手の中にある先輩にもらった飴玉に目を落とす。
それは甘い甘いイチゴミルクだった。
先輩の小さなやさしさの積み重ねが、私の中の先輩への想いをどんどん膨らませていく。
先輩にもっと近付きたい。……できるなら、いつか、この気持ちを先輩に伝えたい。
「さきこの企画、楽しみにしてるから」。きっと何気なく言ってくれた一言だとは思うけど、たったそれだけで私の気持ちは上昇する。
今は中途半端だけど、企画が完成したら行動しよう。
告白は無理だとしても、ご飯に誘うとか、遊びに誘うとか、少しずつでも先輩に近付けるように。
そして、いつか伝えたい。
好きです、って。
OKをもらえる可能性なんてゼロに近いと思うけど、その時は、考えてくれませんか?って伝えることだってできるはず。
友達からでもいいから、少しずつでも先輩の視界に入りたい。

