モノクロ

 

ドアがパタンと閉まると同時に、あまりの呆気なさに、はぁ~と息をついてしまう。

せっかく佐山さんが協力してくれたのに、先輩には会えなかったなぁ……。

やっぱりそんなに簡単に物事がうまくいくわけじゃないってことだよね……。

残念だけど、タイミングが合わないんじゃ仕方ないか……。

マンガの中では偶然は何度も起こるものだけど、現実はそうそう起こるものじゃないから。

でも、このまま会えないまま忘れられちゃうのは寂しすぎるし、どうにか自然に会える方法はないのかな……。

この膨らみかけている想いだって、もて余してしまうことになる。

どうしたらいいんだろう……。

はぁと息をついてエレベーターのボタンをポチリと押し、1階から上がってくるエレベーターの表示をボーッと見ながら悶々と考える。

けれど、いい考えなんて簡単に思い付くはずもなく、再びため息をついた瞬間、エレベーターのドアが開いた。

誰も乗っていないと思い込んでいた私は、エレベーターから出てきた影にビクッと体を震わせてしまった。


「!」

「おっと」


私の視界に入ってきたのは、近くで見るとわかるくらいのストライプの入った黒いスーツと淡い水色のYシャツに藍色のネクタイ。

そして、その声は聞いたことのあるもので。

……逢いたい人が、そこにいた。


「あれ、さきこ? 何でここにいんの」

「紀村先輩!」

「何か久しぶり? ……いや、初めて会って1週間も経ってないし、そんなことねぇか。くくっ」


5日ぶりに見る、先輩の明るい笑顔。

本当に先輩だ……。