「紀村さんって……誰にでもロックオンしちゃうんですかね……」
「……ほう。ロックオンされたのか?」
「いえっ、そんなんじゃなくて! 何となく……さっきの話を聞いても、そうなのかなって思っちゃって」
私の否定の言葉に佐山さんは「ロックオンされてないのか。つまらないな」と溢して、言葉を続ける。
「聞いた話だと、彼女と別れたと知った女が紀村に告白して、しばらくしたら付き合ってる、みたいなパターンが多いみたいだけど。紀村から積極的にアプローチすることはないらしい」
「え、それって、好きじゃない相手でも、告白されたから付き合うってことですか?」
「そこまでは知らないけど。でも付き合ってる女のことは、ちゃんと大切にするみたいだな。切れ方も後腐れがないというか。少なくとも三神さんと付き合ってた頃は彼女を大切にしてたし、別れた今でも普通に三神さんと話してるところを見る。もちろん、今は同期として違和感なく、な」
別れた彼女と普通に話せるって……オトナ、って言ったらいいのかな……。
私だったらたぶん態度に出ちゃいそう。
「紀村さんって、何かすごいですね」
「男から見れば羨ましいけどな」
「何言ってるんですか! 佐山さん、あんな美人の奥さん捕まえてるじゃないですか!」
「まぁ、確かにアイツは美人の部類かもしれないな。それは認めよう」
佐山さんが携帯の待受画面を私の目の前に突き付けてくる。
そこに表示されているのは、もう何度見せられたかわからない、佐山さんの奥さんと娘ちゃんの画像だ。
見せられるたびに思うことは一つで。
やっぱり好きな人と一緒にいれるのって羨ましいな、って。
それは結婚した友達を見ていても、よく思う。
何だかんだ言っても、結局、私の奥底には結婚への憧れがあるのかもしれない。

