モノクロ

 

目の前にいる先輩はスーツの上着も脱いでしまって、Yシャツ姿だ。

途中まであったはずのネクタイも取り払ってしまっている。

腕まくりされたシャツの袖からは筋の浮かんだ腕が見えていて、それだけで私の心臓をどきりとさせる。


「んで? さきこの頼みは?」

「“さきこ”呼びは定着です?」

「うん。佐々木さんって言いにくいし、何かかわいいじゃん」

「!」


不意に、先輩にふにゃっと無防備な笑顔で笑いかけられて、ドキン!と心臓が跳ねた。

お酒のせいで熱い顔が、さらに熱くなっていく。

……落ち着け、私。これは酔っ払いの言葉だ。

私もお酒をそれなりに飲んでいるけれど、一応まだ理性も記憶も保っていて。

というか、先輩と二人でいれる嬉しさの方が大きくて、いつもより酔えないでいたりする。

それに、これは先輩に近付けるチャンスなのだ。

相手に近付くには相手を知ることから始まる!って、何かのマンガで読んだことがあるし。

お酒の力を借りてでも、いろいろ聞き出したいと思う気持ちが大きくなっていた。


「先輩、じゃあ質問タイムでお願いしまーす! 先輩って、彼女さんとかいるんですか?」


直球すぎるかもしれないけど、飲みの場での恋バナは定番だし、今の私に一番重要なことだった。

彼女がいるなら、深くハマる前に膨らみ続けている先輩への気持ちを消してしまう必要があるから。

彼女がいなければいいな、と祈るように、先輩の返事を待つ。