*
「さきこ、お前強すぎ!」
「あれぇ? 先輩、もうギブですか? 意外と弱いですねっ! じゃあ、今回は私の勝ちってことですね~」
「あ? 負けてねぇし! まだ飲める」
先輩が飲み物メニューを取ろうとしたけど、私はそれを制した。
夜11時を回ってしまった今でも、さすが金曜日とあってか、居酒屋にはたくさんの人で賑わっている。
お酒も入ってるしテンションも最高潮に近付くにつれて、おしゃべりする声も大きくなっていく。
「もう、駄目ですー。はい! ウーロン茶ありますから、これ飲んでくださいね~っ」
「お、いつの間に頼んだんだよ。気が利くじゃん」
「いえいえ、そんな。もっと誉めてください! さてと、負けた先輩には何をしてもらおうかな~」
「は? そんな約束してねぇだろ」
「しました! 私の心の中で!」
「はあ? んだよ~、まったく」
くくくっと楽しそうに笑いながらウーロン茶を飲む紀村先輩を、私はじっと見る。
気付いていないのか気付かないふりをしているのかどちらかはわからないけど、先輩はものすごくたくさん飲んでいて。
まるで、何かを吹っ切るかのように、何かを流し込むかのように。
私が知らないだけでいつもこんな感じなのかもしれないけど、何となくもうこれ以上飲ませない方がいいと、私は勝手な判断を下した。

