モノクロ

 



「──そう。わかった。うん」


営業部のある4階にエレベーターが着きフロアに降りた瞬間、私の耳に入ってきた声。

その声に心臓が大きく跳ねた。

初めてその声を聞いてから1日も経っていないというのに、誰の声なのかわかってしまう。

そう……この声は紀村先輩だ。

わわわ、心臓がバクバクしてきた……!

今にも飛び出しそうに感じる心臓が苦しく思えたけど、早く先輩の顔が見たくて、私は声がした方にゆっくりと歩みを進める。

先輩、まだ会社に居てくれて良かった。

今日は金曜日だし、帰ってたらどうしようかと思っていたから。

この角を曲がれば、先輩がいるんだ……。

ドキドキしながらそろりと覗き込むように角の向こうに顔を出し、私は口を開いた。


「き──」


先輩の名前を呼ぼうとしたけど……止めてしまった。

……そこにいた先輩の表情が辛そうに見えたから。

先輩が携帯を見て、ハァと息をついたのがわかった。

どうしたの? 先輩、何でそんな辛そうな顔してるの……?