「どんなに考えても、俺の都合のいいようにしか思えなかったんだよなー。忘れるとか離れるっていうのは全然良くないし、撤回してほしいんだけど」
「え?」
「つーか、忘れられたら困るんだよ。離れられるのも。うん。すっげぇ困る」
「……えっと、先輩。もっとわかりやすくバッサリ言ってもらえませんか? あの、覚悟は、できてますから」
先輩が何を言いたいのか、全然わからなかった。
「悪いけど、気持ちには答えられない。迷惑だ」って言うんじゃないの?
どうせふるんだから、期待なんか持たせずにばっさり言って欲しいのに。
「困る」だなんて言われたら、変に期待してしまう。
小さな期待もしたくなくて、早く言ってほしいと訴えるように先輩を見つめていると、するりと私の手に先輩の手が触れ、指が絡み合った。
つい身を引きそうになるけど、先輩は許してくれない。
男の人、ましてや好きな人とこんな風に指を絡み合わせるなんて経験はほとんどしたことなくて……、もう、どうしていいのかわからなかった。
「せ、せんぱ……」
「まさか自分がこんな風になるとは思わなかった。もう、一生、人を好きになることなんかないと思ってたのに……。すげぇな。さきこ」
「ひゃ……っ!?」
繋がれた手を引かれ、私の体はあっという間に先輩の胸の中。
繋がれていない方の先輩の腕は私の体を包み込み、普段は他人に触れられることのない背中に触れられている感覚に、つい逃げるようにシャキッと背筋を伸ばしてしまう。
……どうしてこんなことするの?
期待させるようなこと、しないで欲しいのに。
こんな風に優しく抱き締められたら、期待しちゃう……。
そっと先輩を押し退けるようにして先輩の中から抜け出そうとするけどびくともしなくて、何とか振り絞って声を出す。

