ふと、この前読んだマンガのワンシーンが頭の中に浮かんだ。
エレベーターの中で濃厚なキスをする男女の姿。
そうそう。マンガだったら、こういう場面でいきなりキスとかされちゃったりするんだよね。
超有りがちな感じで。
まぁ実際は起こるわけないんだけど。
「佐々木さん」
「えっ!?」
気付いたら超至近距離に紀村先輩が立っていた。
その距離、約30センチ。
まるで壁ドンをされているような距離に、私は大いに焦る。
なななな何っ!? この距離……っ!
「昨日、頑張れって言ったけど、無理はすんなよ? 日付変わる前にはちゃんと帰ること」
「!」
「体調管理も社会人の仕事だからな。わかったか?」
「……は、はい」
さっきのようなからかうような表情はそこにはなくて。
目を細めて優しく笑う紀村先輩の手が私の顔にゆっくりと伸びてくる。
な、何これ……っ、もしかしちゃうんですか!?
うそ……本当にマンガみたいなことが──。

