「あー、こいつに捕まってさ」
「へっ?」
突然矢面に立たされてキョトンとしてしまうと、三神さんの視線が私を向いた。
穏やかそうに見えるけど、じっと私を捕らえる貫くような視線が何だか痛くて、つい身を引いてしまいそうになる。
“見定める”。そんな言葉がぴったりの視線だと感じた。
「後輩さん? 営業の子ではなさそうだけど」
「佐々木さんって言って、佐山の後輩だよ」
「佐山くんの? じゃあ、企画の子なのね」
「そ」
先輩が頷いた瞬間、三神さんの視線が柔らかなものに変わる。
その表情の変化にほんの少しだけ違和感を覚えたけど、はっとして自己紹介をする。
「あの、おはようございます。企画部の佐々木です。佐山さんにはいつも大変お世話になってます」
「おはよう。総務部の三神です。隼人と佐山くんとは同期なの。と言っても、二人よりも年齢は二つ上なんだけどね」
三神さんはぺろっと舌を出しておどけるような表情をするけど、それでも美人さんだ。
若菜さんもそうだけど、綺麗な人は何をしても綺麗なんだな、と思う。
ていうか、先輩の周りって美人さんが多すぎる……。
しかも、この人と付き合ってたんだよね? で、フった……? ……やるな、先輩。
「今、佐々木さんに妙になつかれててさ。今もおごれってうるさくて、困ってんの」
「! ちょ、困ってるって、先輩酷いですっ!」
「本当のことだろ? つーか、世話になってるってとこのくだり、俺の名前を何で出さない」
「うっ、……き、紀村先輩にも大変お世話になって……いるかもしれません」
「くくっ、だろ?」
くしゃり、と私の頭を先輩が撫でる。
触れてもらえたことに嬉しくなって、顔が緩んでしまう。
「そうなの。仲いいのね?」
「仲? 一緒に飲みに行ったりもするけど、別に普通のことだろ?」
「……そう」
「……!」
先輩に向いていた三神さんの目線が私にすっと移る。
穏やかな雰囲気にも関わらずじっと見据えるような目になった気がして、つい怯みそうになってしまう。
私、美人さんのこういう目には何か弱い気がする……。若菜さんの時もそうだったもんな……。

