モノクロ

 

「あっ、そうだった! 私、先輩に伝えたいことがあったんです」

「何? もしかして、愛の告白?」

「……はいっ!?」


あ、愛の告白って……!

どう答えればいいのかわからなくて、つい戸惑ってしまっていると、先輩がくすくすと笑い始める。


「くくっ、バーカ。何でそんなに慌てるんだよ。冗談に決まってんだろー? 俺の漫才の相方になりたいんなら、シャキッと切り返せよー」

「! もうっ、変な冗談はやめてくださいよ! 私は漫才なんかしたくありません!」


冗談でもそんなことを言われちゃうと、本気で戸惑っちゃうから困るんです!

ぶぅと膨れっ面をすると、先輩が「はいはい」となだめるように私の頭を撫でてくれた。


「で、何の話?」

「あっ、あの、以前企画書を作成したブックカバーのプロジェクトが具体的に動き出したんです! 営業にも連絡はいってるだろうしすでに知ってると思ったんですけど、先輩に直接伝えたくて」

「うん。企画のことなら聞いてるよ。やったじゃん、さきこ」

「はい!」

「大変なことも多いと思うけど、俺も力になれることがあればいつでも相談とかのるから。頑張れよ」

「ありがとうございます!」


先輩の励ましが嬉しくて、私は涙が出そうになりながら笑顔で頷く。

単純だけど、先輩にこんな風に言ってもらえたら百人力だ。

拳を握りしめて、よし頑張ろう!と決意する。


「なぁ、さきこ」

「はい?」

「……隼人?」

「!」


先輩が私を呼んでくれて何かを話し出そうとした時、先輩の名前を呼ぶ声が耳に入ってきた。

声のした方向を振り向くと、そこには総務部の三神さんがいた。

……三神さんは、先輩が昔付き合っていた人。

私とは正反対で、大人の魅力を持つその姿。そして、外見だけではなくて凛とした高めの綺麗な声も魅力的だ。


「あれ、絢(あや)じゃん。おはよ」

「おはよう。珍しいね、隼人がここにいるの」


三神さんは先輩に笑顔を向けて、歩み寄ってくる。

その動きには全く無駄はなく、つい見とれてしまうほど綺麗なもので。

そして気になってしまったのは、先輩が三神さんのことを名前で呼んだこと。

付き合ってたんだし当たり前なんだろうけど……。

“あや”と“あき”で一文字しか違わないから、何だかすごく切ない気持ちになってしまう。