モノクロ

 

「わかるよ、自分で企画したものを自分主体で作り上げていきたいっていう気持ちは。でも企画を商品にすることはそんなに簡単なことじゃないし、企画書を作っていた時みたいにやりたいように動いてもらうことはできないってことはわかるね? できることから実現していくしかないんだ」

「……はい」

「その話に関連するんだけど、もうひとつ受け入れてもらいたいのは、今回は企画書に書いてもらった全てを叶えるのが難しいことだ。細かいところまで検討してもらっているから進めたい気持ちはあるんだが、まずは実際にうちの商品としてのブックカバーを製作して、実際の店舗に置いてもらう方向で進めるつもりだ。インターネットは手に取った時のイメージが違うとかのリスクもあるし、まずは店舗での売り出しを考えてる。売り上げ次第ではさらに営業を拡大したり、将来的にはインターネット対応を検討していくつもりだよ」

「……なるほど、ですね」


あの企画書は私の理想が詰まっているものだからこそ、全てを叶えることが難しいことは承知の上だ。

企画が通って一部が形になることだけでも幸せなんだから。

もし今の話を受け入れたとして、これから先はいつもと同じように企画に関わらせてもらえないのかな。

その不安が私の頭の中を渦巻く。


「……ただ、勘違いしてもらいたくないんだが、佐々木さんに一切参加してもらわないというわけじゃない。ここ1年くらいは企画の仕事にも少しずつ加わってもらっているし、これを機会に佐々木さんには企画の実際の仕事を任せていきたいと思ってる。
やっと佐々木さんの下も入って仕事を任せられるようになってきたし、今までの仕事は下の子に任せて。引き継ぎをしつつ、今回はこの企画のチームに正式に加わって一部担当を持ってもらおうかと思ってるんだ。もちろん、企画を進める中で他の担当の部分に関しても意見を言ってもらうのは大歓迎だから、どんどん入ってきて欲しい」

「! 企画に加えてもらえるんですか……?」

「あぁ、それはもちろん。今言ったことを受け入れてもらえるなら、だけど。どうかな?」


部長の言い分には文句のつけようがなくて。

「これをやって」と言われたところで私は何もできないし、うまくできる自信だってなくて何よりも不安だ。

物事を進めることは気持ちだけでできることじゃないから。

佐山さんや他の人の仕事を見てきたとは言っても、実際の流れや対応の仕方はほぼ知らないのが現実で。

それに、企画書を書く人と、それを商品の形まで持っていく人が違うケースが多々あることも知っている。

きっと、この企画に加われることが私にとっての更なる一歩なんだ。

しかも、これからはもっと企画の仕事ができるかもしれないんだから。

私の目標のひとつに携われることには間違いない。

私は気持ちを固める。