あ、あれ!? 身体が動かないんですけど!
どんなに力を入れて起き上がろうとしても、私の身体は先輩の腕に強く捕らえられていて、びくともしない。
何でっ!? どうして!?
慌てれば慌てるほど、今にも火を吹き出してしまうんじゃないかと思うくらい、顔も身体も熱くなっていく。
「あああのっ、先輩……っ! はなっ、離しっ」
「ほら、梢。仲良しな」
「ん!」
先輩は私の言葉なんて聞こえていないかのように腕の力を弱めようとはせず、にっこりと梢ちゃんに笑い掛ける。
目の前にいる梢ちゃんは「うん!」と満足そうに笑い、その向こうに見える若菜さんと佐山さんもにこにこと笑っていた。
……いや、佐山さんだけはさっきと同じでニヤニヤだけど。
この場で笑えずに戸惑っているのは、私ただ一人だ。
先輩の体温。鼻をくすぐる良い香り。相当重いはずの私の身体をしっかりと支えてくれる胸と腕。
全てに“男の人”を感じて、全身が心臓になったかのように、心臓がばくばくと鳴り響く。
私の異常なほどの鼓動や熱が先輩に伝わっていないか、不安になる。
……ど、どうしよう……っ!
「あーちゃも! にこにこしよっ!」
「へ!? そそそうだねっ、梢ちゃん!」
「ん!」
私の言葉に梢ちゃんがにっこりと笑って答えてくれて、嬉しさが込み上げてくる。
やっ、やばい! 梢ちゃんが私の言葉に反応してくれたなんて、嬉しい!
けど、けど、けど……!
完全に先輩から伝わってくるあたたかさに引っ張られている私の心は、先輩以外のことを殆ど受け付けてくれない。
先輩のことでいっぱいだ。

