「お願いします」
有無を言わせない口調が迫力ある。

私は反射的にうなずき
いつものように一枚の紙を渡して、生年月日と名前を書いてもらう。

私より
3つ上なのか
誕生日はバレンタインデーなんだね……と、こんな状況でもチェックしてしまう。

「占って欲しい事はありますか?」
営業用の声を震わせながら本を開いていると

「恋愛運をお願いします」
強く言われた。

胃が苦しいわ。

返事をせずに
星座表に彼の星の動きを書いていると

「気になる子がいました」
彼が言う。

「最初は嫌いなタイプだと思ったけど、どうしても惹かれてしまう自分が怖くなるくらいでした」

顔が上げられない。

「僕は占いが嫌いで。嫌いな理由は彼女も理解してます。占い師に惚れるなんて考えられない。離れようと思ってた。でも彼女が気になって……もっと会いたい触れたい他の誰にも渡したくない」

返事したくない。

「ついカッとなってはずみでキスしたら、彼女は泣いて怒ってしまい。そんな純粋な彼女に夢中になっていた」

「だからそれは犯罪」
そこは譲れないよ私は。

「うん。本気で反省した」

「もう……しないでね」

「今度は許可をもらう」

冗談か真面目かわからない。