それでも私は何も行動ができない
あと一歩
もう少しの勇気があれば
どうにかなったのかもしれないけれど、ゴミ箱から拾った彼の名刺を見つめて溜め息するだけで、何もできないまま毎日を過ごす。
シェフも凜子さんもマー君も(いや、マー君は彼に対する私の小さな恋心も気づいてないだろう)それ以上の事は何も言わない。
このまま自然に終わる。
それも運命なのか
占い師
自分の運命は見えません。
確認もせず
自分から仕向けた『さよなら』
きっと嫌われているだろうし
きっと
私の存在も忘れているだろう。
私は
ただひたすら
息をして食事をして仕事をする。
マー君の家からお母さんがもらってきたルンバの方が生き生きしていた。
凜子さんとマー君の
クリスマス挙式が近づいてきて
そろそろ店仕舞いをして
リアルタイムで録画しているFNS歌謡祭を見ようか、それとも終わってから一気に見ようかと悩んでいると
「まだ開いてます?」と、長身の黒いコートが現れ
彼が立っていた。
「あ……」
あ……しか出ない。
「占ってもらいたのですが」
走って来た?
息を切らし
コートを脱ぎ
スーツのネクタイを緩めながら私の前に座った。



