流れる星を見つけたら


それでも無難に商売をし
今日に限ってギリギリでお客さんも入り、遅い時間に店仕舞い。

手際よく片付けても正面玄関は閉まってる。
だから階段を使って下まで降りる。

途中で見えた
例のジュエリーショップ
もう次のテナントが入る準備をしていた。

こうやって
次から次へと店も変わり
過去の出来事は忘れられてしまう。

ほとんど
昨日の今日の出来事なのに
もう
全てが終わり
現場検証もなく次の店になる。

悪い事しても捕まる事無く
もう終わった話。

正直者はバカを見る?

心が悲しいわ。

階段を一気に下がり、管理会社のおじさんに挨拶して帰ろうとしていると

背の高い
グレーのスーツが見えた。

「お疲れ様」

邪悪刑事が笑顔を見せた。

昨日はどうもありがとよ。
そして
あばよっ!
気分は柳沢慎吾。

もう二度と合わないと思った男に挨拶されるとは。

「おかえりですか?」

無視しよう。

「最近物騒だから気を付けて帰るように」

無視だ無視!

肩を上げて扉を開くと
ひとりの女性が急いであちらからやってきて、私にぶつかりながらガラス張りの管理室に入って行った。

「遅れてごめんなさい」
私に謝りもせず
目を輝かせながら女性は邪悪刑事に頭を下げた。

待ち合わせか?こんな場所で?

細身で派手系な30前後の女性。
どこかで見た事が……と、彼女の首に輝くダイヤのネックレスを見てハッと思い出した。

例の
ジュエリーショップの従業員だ。