いや、そう思い込むしかなかったのだ。


『芽衣?頑張って来たね』


芽衣は男の右手で涙を拭われて、初めて涙している事に気づいた。
男はそのまま、優しく芽衣を抱きしめる。

雨で少し湿った男の服は彼の香りをいっそう際立たせ、またその甘い香りに癒され、本当は寂しくてたまらなかった事を思い知る。


『あー本当可愛い。
ねぇ芽衣?俺このまま付け込んじゃっていい?』


「一緒に……居てくれるの?」


芽衣は涙声になりながらも、男にそう問いかけた。


――芽衣が望むなら
いつまでも君の側にいるよ――

男はそう呟き、芽衣を片方の腕で抱きしめながら、もう片方で芽衣の頭を撫でた――