「おまえって、いつから声優やってたっけ?」
オレは初めて見る賢哉の表情に驚いていた。
いつも自信たっぷりで、余裕ぶっこいてるコイツが、
自分のことでこんなふうに悩んでいたなんて思いもしなかった。
「高校の受験受けてすぐくらい、かな?
昔から憧れてはいたんだけど、なかなか受からなくて、初めてオーディション受かって事務所入ると同時にショートムービーの主人公の男の子の吹き替え、やることになったんだ」
「あ、それ知ってる。
けっこう大きく記事になってたから」
オレは記憶を思い起こす。
確か、
『若干16歳の新人声優がまさかの抜擢!?』
的な見出しに、こんなことは異例であり、その役を狙っていた多くの声優が驚愕の色を隠せない。
みたいなことが書かれていた気がする。
元々アニメや声優が好きなオレにとってはけっこう鮮明な記憶かもしれない。
「知ってるんだ?
なら、今いったこと、わかるだろ?」
「あぁ……」
きっとその時いろんなことを言われたのだろう。
賢哉がいつも気丈に振る舞うのは、
もしかしたら、弱い自分を見せることで他の人から笑われることを恐れているのかもしれない。

