『私さ、ずっと先生の弱味握ってるみたいで嫌だったのよ』
木崎は急に言い出した。

『は?』
俺には何を言い出したのかわからなかった。

『先生、なんであの事私に話したの?』
『わかんねぇ』
俺は間髪入れずに答えた。

あの事、が何であるかはすぐにわかった。

そうか。そういう意味か。

木崎は、俺の秘密を知っていたことを
心の重荷だったのだろう。

だから、木崎の秘密を打ち明けてきたのだ。

『…奥さんには?』
『…話してない。あのあとも誰にも話してないしね…』
『墓場まで、持っていきな。
私が一緒に背負ってやる。』

木崎は少し目を閉じた。
そして目を開けて木崎は話した。

『今のこの歳であの事を聞いたらへーそうなんだ、って聞けたと思う。
私の友達もそういうことがあった人いるし。』
そのあと木崎は少し笑った。
『でも、先生。私あのとき14だよ(笑)』
そうだよな、重荷だったよな…
『正直ショックだったし
ショック過ぎて熱出たもん(笑)』
木崎は、笑った。

『でもさ。お陰で先生という職業をしている人を聖職者と思わなくなったな。
同じ人間だと。そう思えるようになった。』

そういう風に思ってくれてたのか。

きっと木崎は、俺の秘密がずっと傷だったのだろう。
それを、自分の傷を俺に負わせることで
相殺したのだろう。

『先生と私はさ。
共謀者なんだよね~』
木崎はいたずらっぽく笑った。

『まぁ。私もさ。
この10年くらいでいろんなことがあって
もうだめかなと思うことがたくさんあったけど
結構メンタル強いんだよね。
ダメにならんかったし。
だから、なんとか頑張ってみるよ。』

木崎は時計を見た。
『さて、先生。
みんなに会いに行くか。』
そういうと席を立ち、他の仲間と会う待ち合わせ場所に二人で向かった。