『…でも…
無視されてた原因わかってすっきりしたわ』
木崎の目は泣き腫れてはいたが何かを吹っ切った顔をしていた。

好きな男と仲良くしていた女を
体壊すまで追い詰めた石本。
石本には石本の言い分はあるんだろうけど。

それだけ恋愛が人生のウエイトを占めるお年頃なのだろう。

よく女子生徒を見ていると好きな男と目があっただけでキャーキャー騒いでたり
ちょっと体が触れただけで妊娠でもするような騒ぎをしてたり
そんなことで嬉しいか?と30近い俺からは思ってしまう部分がある。

そんな年頃の木崎に俺の過去を話したことは
木崎にとってどのくらいのダメージを与えたのだろう。

元々妙に大人びた考えの子だったが
あの事を話してからの木崎は
大人びた、ではなく大人の顔になっているときがある。

俺の考えすぎなのかもしれないが…

木崎は石本とのことがなければ
俺の過去を知ることはなかっただろう。

俺も誰にも話さずにその後の人生を送っただろう。

『まぁさ、木崎。
4月からは新学年だ。
クラス替えもあるから。』

会議で木崎と石本は来年はクラスを離すという話も出ていた。

木崎にその事をいうわけにはいかないので
匂わす程度に話した。

『でもこれだけのことがあって石本さんと同じクラスにされたら先生たち鬼だよね。』
と木崎は少し笑った。

そして木崎は石ちゃんと呼んでいた石本を
『石本さん』と呼んだ。
あの子なりの決別だろう。

木崎を守ってやりたいと思った。