その後一週間。
遅れたり早退したりしながら木崎は学校へきていた。

中学生くらいで友達から無視されるというのはきついことだろう。
中学生には中学校しか世界がない。
俺くらいの歳になれば
職場だけでなく学生時代の仲間の世界や趣味の友達の世界があり
いろんな自分の場所がある。

それでも葛藤しながら木崎は小さな世界で生きていたと思う。

そして終業式。

生徒たちは下校し
学校を見回っていると階段の上で誰か話している声が聞こえる。

木崎と石本の声だ。

俺は出ていくわけにいかずその場に立ち止まる。

石本がなにやら声を荒げていた。
『だからキザさんが丸山くんと仲良かったのが気に入らないんだって!』
『丸山とは幼稚園からの付き合いで
石ちゃんが告白してからは私も丸山とあんまり話さないようにしてたよ』
『でも私の前で話してたでしょ!』

丸山とは木崎と石本と同じクラスの男子だ。
多分石本は丸山が好きだったのだろう。

木崎は男勝りな子なので男の子とも遊んでいるような子だった。
それに引き換え石本は男の子とあまり話せないような子だった。

きっと石本は木崎が羨ましかったのだろう。

『私が丸山君好きなの知っててそうしてたでしょ?
だからキザさんとはもう付き合わない。』
『…それは構わないけどさ。
部活ではあからさまに変な態度取らないように約束して。』
木崎が凜とした声で石本にいっていた。
『それだけはちゃんと約束して。』
『わかったってば!』
そういうと足音が聞こえた。

はぁ…というため息が聞こえた。

俺は階段を登った。