『…で?
彼女は今どうしてるの?』

そんなことを話続けた俺に木崎が妙に大人びた声で俺に尋ねた。

『…わからない。』

『そのあと彼女とは?』

『その1年後くらいにやっと話せた。
たまたま演奏会の帰りに二人になって…
その事は話さなかったけど』

木崎の話を聞くつもりでいたのに
俺はなにやってるんだ…とこの辺りになったら冷静に自分の状況を考えている自分がいた。

木崎は少し考えたような顔をして俺の話を聞いていたが
『…先生も同じ人間なんだね』
と悟りを開いたようなことをいった。

『ほら、先生って言うとさ、
なんか偉い人っていう感じじゃん。
でもそうじゃないんだと思ってさ』

『そりゃそーだよ』

学校には誰もいなくなっていた。

『…さて。帰るか』
木崎は笑いながら立ち上がった。

外はもう真っ暗だった。
『送っていってやるよ』
『いいよ、襲う物好きいないだろうやっと見つけたから。
ありがとね、先生。』
そういうと鞄を肩に掛け手を振って出ていった。

俺も慌てて帰る支度をして車に乗り走らせた。
木崎が歩く姿を見つけ横に止まる。

『乗ってけ!』
『いいよ』
『いいから!』
そういうと木崎は助手席に乗り込んできた。

木崎は黙っていた。
ふと木崎の顔を見ると泣いていた。

『木崎…?』
『…先生…』
そういうと木崎は泣きじゃくっていた。
近くの公園に車を止めた。

『ごめん、木崎』
俺は謝った。
木崎は首を振った。
なんで泣いているんだ?
俺に絶望したか?
俺を軽蔑したか?

なにも聞けなかった。

ただ、俺は。
その木崎を抱き締めた。