君に捧ぐシュート


先輩は悪びれた様子もなく軽く笑っていた。


「いやー、いずみんが元気なさそうだったからさ、
いずみん、このメーカーのお茶好きって言ってたっしょ。
ちょっと苦味があるのがいいって」

「よく覚えてましたね」

「俺、人の好み覚えるの得意だから!」

「人の好み?
食べ物とかですか?」

「んー、それもあるけど……」


すると、小田先輩はグラウンドの方を見てニヤリと怪しげに笑った。


「例えば、アイツ」


小田先輩の視線の先をたどると、翼の姿があった。


「翼……ですか?」

「アイツの好み、何だと思う?」

「翼の好きな食べ物なら……」

「そうじゃなくて」


そうじゃない?

あたしが首を傾げると、小田先輩は小さく口元を緩めながらあたしの方を見た。


「お前だよ」

「あたし……?」

「そ。
アイツの好きなタイプ、汐田泉っていうたった一人の女の子」

「えっ!?
ちょっ……先輩!?」


何言ってるの……!?