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「え!!??何で!?」
「だぁかぁらぁ、
沙奈は夏合宿までって約束だったからもうこねぇの!」
部活が始まる少し前。
裕大が皆に最初に告げたのは
沙奈ちゃんの事だった。
確かに、夏合宿までと決めたのは俺と裕大。
あまりにも皆と馴染んでいて、
自分で言った言葉を忘れていた。
「連れ戻してくれって!
マジ、沙奈ちゃんいねぇと俺っちやってけねぇよ!!」
「んな事言ったって、
沙奈が来る前までは渡邊1人がやってたんだから、
また前と同じ日常になるだけだろ?」
「けどよ・・・」
俺は、皆が抗議している間、何も言葉が出なかった。
これで、沙奈ちゃんとは話せなくなる。
それだけが俺の頭の中で何度も過った言葉だった。
家に帰ってベッドに寝転んで目を瞑れば、
頭に浮かぶのは夏合宿の事。
夜、沙奈ちゃんと一緒に話したり、
スコアブックの書き方教えたり。
思い出すのは、沙奈ちゃんとの思い出。
そして、“触れたい”と思った。
「悼矢、やんぞー!!」
「おー」
