車の音も、行き交う人の声も、なにも聞こえない気さえしてくる。 鼓動の音だけが、ヘッドホンを通して聞いているように鮮明に聞こえてくる。 爽汰の綺麗な顔がゆっくりと、スローモーションに近づいて、私の唇に触れるだけのキスをした。 ああ……やっぱり爽汰は。 「お前が好きすぎてやばいから……絶対離れんな」 そうやって私の心を、簡単に奪えちゃうんだ……。 ―完―