その手が今度はゆっくりと頬を滑り落ちる。

私は、もう立っているのも苦しいぐらいの胸の鼓動の激しさと顔の火照りを感じていた。

「…熱は…ないな」

それでも手を離さない龍太に視線を合わせる。


その視線が絡まる。

龍太の黒い瞳に…私が移る。


その瞳がゆっくりと、だけど確実に近づいてきて―――



“キスはしない”

龍太が言った言葉。


そうよ、龍太はキスはしない…。

そう思い出して、視線を逸らそうとした、そのとき――――…


え……?


―――…唇にやわらかい感触―――



軽く触れるだけのキス…。

けれど―――…


キスはしないと言った龍太からの…キス。

初めての…キス。