有紗に引きずられるように連れられて来た場所は

今は誰もいない屋上。

「ここならゆっくり話せるよね」

―――有紗。

「…昼休みに…だいたいのことは慎から聞き出した」

あー…沖本君は知ってるんだ。彼に他にも彼女がいること、とか。

「…有紗の言いたいことはわかってる」

「だったら――」

「でも!それでも好きなの!……好きなんだよ…彼のこと」

そんな言葉以外出てこない。

「泣くのは琴葉だよ?」

一言そう言って有紗はフェンス近くに座った。

私も黙って隣に腰を下ろす。

「琴葉…アイツは…竹内はアンタのこと、本気で好きになることなんて…ないかもよ?」

有紗の一言一言が胸をえぐるよう。


わかってる…わかってるんだよ、有紗。それでも…それでもね?

「……好きだから…諦められない」

「琴葉…」

有紗はそれ以上なにも言わなかった。

だけど最後に

「私は琴葉の味方!いつでも相談にのるし、アイツを殴りたくなったらいつでも言って」

笑顔で私の頭を優しく撫でてくれた。

「ありがと…」

私は親友の胸で泣いた――。