「琴葉……」

彼は私の涙を指で優しく拭うと

「それがいやなら…やめる?俺と付き合うの」

…やめる?…ずるい…そんな風に優しく抱きしめられて囁かれて、いや…なんて言えない…言えるわけがない。


こんな歪んだ関係、ダメなこと、わかっているのに…。

好きな気持ち…もう止められなくなってる。


たとえ金曜日だけの彼女だとしても、今だけは私のもの。私だけの彼。


「…それは…いや」

そう言ってから彼の方を向いた。

「…だから…今だけ…今、私だけを…好きって言って」

その一言でこの一週間どんなに無視されたとしても頑張れる気がしたから。

それなのに―――


「束縛?」

「えっ?」


思いがけない彼の言葉に一瞬、クラリとする。

…束縛…?そんなつもりは…ないのに。


「言っとくけど…」

彼がスッと離れていく。

「束縛とか詮索とかされるの…いやなんだよね」

「え…そんな…つもり」

ない…とは言えないけど…でも。


「束縛なんかしたら即、別れるから。そのつもりで」


それだけ言うとチャイムの合図とともに彼は図書室を出ていった。

ただ、呆然と立ち尽くしてしまった私。

その場から動けなくなってしまっていた――…。