龍太の過去―――…。

暗闇にいた龍太を救ったのは

実は初恋の子だった琴葉ちゃん。


―――…最初から。


そうだ…最初から叶うはずのない想いだったんだ。


そんな琴葉ちゃんのために、今、龍太は一歩踏み出そうとしている。



―――――――…

「俺には連絡、くれよ?」

「――…ああ。慎。琴葉のこと」

「早く帰って来ねーと俺が奪っちゃうよ?」


「ククク…ああ、わかってる。琴葉を頼む」

「大丈夫」

お前の―――大事な親友の頼みなら。


だけど、さっき言った言葉も半分は本気だからな。


早く―――できるだけ早く帰ってこい。

じゃないとマジで俺が奪うからな。



空港内にN.Y行きの搭乗手続を知らせるアナウンスが流れる。


「――――…じゃあ」

立ち上がり、俺に視線を向けてから

ゆっくりと歩き出す。



「またなー、慎」

背を向けたまま、手を振る。


「おお」

―――またな。