桜が満開に咲き乱れ、春の心地よい風が吹き抜ける。


そんな日の帰り道。



黄色い帽子とちょっと大きめの制服を着た、新一年生らしい女の子が

慣れないランドセル姿でトコトコと前を歩いている。



―――…私が龍太と初めて会ったのも…あの子ぐらいの頃だったかな…。



空を見上げる。


今、どの辺り…かな。


―――――――――…



「琴葉ちゃん、マジで行かないの?見送り」

今朝、私の家まで迎えに来てくれた沖本君。


「うん。見送りはもう昨日すませたから…。今日は行かないって…言ってあるの」

「…そう。じゃあ、俺行ってくるよ。―――…なんか伝え忘れたことは…ない?」


首を横に振る。


大丈夫。

伝えなくても。

たとえ言葉にしなくても――…もう大丈夫。


「わざわざありがとね。早く行ってあげて…きっと待ってるはずだから」

親友が来ることを―――…。