何度も何度も話し合って

納得したはず。


それでも迫る別れの瞬間(とき)。

胸がズタズタに潰されてしまいそうな思い。



龍太の決心が変わらないとわかったときから

私はその瞬間をできれば笑って迎えたいと

笑って見送りたいと思っていた。


だけど、こんな…映画を見ただけで揺らいでしまう。



2人で歩くこの道も

もうすぐ私は1人で歩くことになる。


繋がれた右手から伝わるその温もりもいつか消え

吹き抜ける風の冷たさだけが残る。



龍太の香りも思い出も

いつか消えてなくなってしまうんじゃないか…。


あの幼い頃のように

私はまた忘れてしまうんじゃないだろうか――…。

―――――…ううん、むしろ龍太の方が私のことを忘れてしまうんじゃないだろうか。


募る不安な気持ちを振り払うように。

繋がれた手を強く握りしめた。